製造業採用ラボ

製造業の採用サイトは、何から手をつけるべきか ― 3C分析で考える設計の順番

作成者: 吉澤 哲也|株式会社コンテナ 新規事業開発室|Oct 19, 2026, 12:59:59 AM

伝えたい技術や想いがある。誇りがある。それを、採用ホームページのコンサルティングをしていると、そう強く感じます。

「うちの業界は専門的すぎて、学生にどう伝えればいいか分からない」。製造業の採用担当者から、こうした相談を何度も受けてきました。

伝えたいことが多いほど、採用ホームページに載せる情報は増えていきます。しかし増やすほどに、何を伝えたい会社か分からなくなっていく。そんな逆転が起きています。

情報を増やすことは、簡単にできます。難しいのは、減らすこと、あるいは順番をつけることです。この記事では、採用ホームページを作る・見直す際に、何を、どの順番で決めるべきかを整理します。

採用ホームページで何を伝えるべきか。それを考える前に、まず外側から確認しておくべきことがあります。自社の思いだけで作り始めると、独りよがりな内容になりがちだからです。

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があります。相手を知り、自社を知って初めて、正しい判断ができるという考え方です。これは、マーケティングで使われる3C分析(Customer・Competitor・Company)にも通じます。

  • 求職者
  • 他社
  • 自社

の3つを、この順番で見ていきます。

学生は、何を見て企業を判断しているのでしょうか。就職活動における情報源の調査(キャリタスリサーチ 2025年卒調査)では、志望企業を研究する際に有益だった情報源として最も多く挙がったのは、個別企業のホームページで、63.1%でした。会社説明会(54.5%)や就職情報サイト(37.9%)よりも高い割合です。

この結果は、少し意外に感じるかもしれません。学生は普段、SNSや動画を見て育った世代です。しかし、いざ企業を「研究する」という段階になると、SNSの断片的な情報ではなく、企業自身が発信している一次情報、つまりホームページに立ち返っています。SNSや説明会は興味を持つきっかけであり、実際に応募するかどうかの判断は、採用ホームページの中身で行われている、ということです。

ただし、同じホームページでも、そこで求められる説明の量には差があります。業界による伝わりやすさの差は、多くの採用担当者がすでに実感している課題です。

BtoCで知名度のある会社であれば、学生は入社前からある程度の予備知識とイメージを持って訪れます。一方、BtoB企業や専門性の高い業界では、そもそも会社名を見ても何をしているのか分からない、仕事の中身が想像できない、というところから始まります。「うちの業界は専門的すぎて、学生にどう伝えればいいか分からない」という悩みは、まさにこの差から生まれています。

同じ63.1%という数字でも、意味するところは業界によって違います。知名度のある会社にとっては「見られて当然の場所」であっても、専門性の高い業界にとっては、「何をしている会社かを、ゼロから説明できる、数少ない場所」です。求職者を知るというのは、この市場全体の傾向と、自社の業界特有の事情を、両方合わせて捉えることです。

求職者が何を見ているかが分かったところで、次に確認すべきは、同業他社が採用ホームページで何を見せているか、です。自社だけを見て採用ホームページを考えると、独りよがりな判断になりがちです。自社にとって当たり前だと思っていることが、業界内でも当たり前なのか、実は珍しいのか。他社と比較して初めて分かります。

見るべきポイントは、大きく2つあります。

  1. 他社が手薄にしている領域
  2. 他社の独自の取り組み

一つは、他社が手薄にしている領域です。例えば中途採用向けのページは、求人票だけで済ませている会社が少なくありません。新卒に比べて採用人数が少ない分、手が回りにくい領域ですが、裏を返せば、力を入れれば目立ちやすい部分でもあります。

もう一つは、他社の独自の取り組みです。基本的な項目を並べるだけでなく、他社ならではの企画を持っているかどうかを見ることで、自社が同じ方向を目指すのか、別の切り口を探すのかを判断できます。

比較の目的は、自社だけを見ていては気づけない、業界内での立ち位置を把握することです。彼を知ってはじめて、次の「己を知る」工程が意味を持ちます。

これでようやく、彼(他社)を知った上で、己(自社)を知る番です。ここでの目的は、社内で評価されている強みを並べることではありません。求職者と他社を知った上で、「求職者から見て、他社にない魅力に映るもの」を洗い出すことです。

技術力、事業の独自性、働く人の姿。長く事業を続けている会社ほど、こうした要素は当たり前になりすぎていて、社内では取り立てて語られなくなっています。

記事の冒頭で触れた「伝えたい技術や想いがある。誇りがある」というのも、まさにこの当たり前になった要素の一つです。だからこそ情報が増えていくのですが、外から見れば、それこそが独自の魅力として際立つ部分でもあります。長く関わっているほど、何が特別で何が普通なのか、感覚は麻痺していきます。だからこそ、求職者の視点や他社との比較を先に済ませておくことが、ここで効いてきます。

こうした魅力を言葉にする手段はいくつかあります。代表の思いや設立の経緯を言葉にすることで、なぜこの事業をしているのか、何を目指しているのかが伝わります。若手社員へのインタビューは、入社後の実際の姿を、等身大の言葉で伝えます。当たり前になっているものほど、こうした「語る場」を意識的に作らないと、外には伝わりません。

自社を知る際は、採用ホームページの現状も、あわせて客観的に見直します。見るべき観点は、次のようなものです。

  • サイトの構造やナビゲーションが分かりやすいか
  • デザインが独自性を持って伝わっているか
  • 応募までの導線がスムーズか
  • メッセージやコピーが感情に訴えかけているか
  • 見出しや基本情報の設定など、検索・AIに正しく認識される基礎ができているか

実際の提案資料の一部|採用ホームページの現状評価(ヒューリスティック分析)

好き嫌いといった感覚ではなく、こうした具体的な観点で、事実として何が弱点になっているかを把握することが、次の工程の土台になります。 

また、自社サイトの現状を「求職者からの見え方」だけでなく「AIからの認識状態」も含めて客観的に把握したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

求職者・他社・自社を知ると、頭の中に散らばっていた情報が、いくつかの課題として見えてきます。次にやるべきは、この課題を一つずつ言葉にし、あるべき姿を描くことです。

情報が多すぎて、何を伝えたい会社か分からなくなっている。新卒と中途で、本来見せるべき情報が違うのに、同じページに混在させている。技術力や事業の独自性を、社内の言葉のまま説明していて、求職者には伝わっていない。応募フォームへの導線が分かりにくく、興味を持った求職者を最後まで運びきれていない、というケースもあります。

こうした課題を洗い出さないまま制作やリニューアルを進めると、デザインは新しくなっても、学生が知りたい仕事内容は伝わらないまま、中途採用者が知りたい待遇や制度の情報も曖昧なまま、という結果になります。

課題を洗い出す際は、一つひとつを独立した問題として捉えるのではなく、優先順位をつけることも大切です。何もかも同時に直そうとすると、結局「あれも直したい、これも直したい」と、記事の冒頭で触れた情報過多と同じ状態に逆戻りします。

判断の軸は、

  • 理解の深さに関わるか、応募の導線に関わるかという視点
  • 自社の情報整理だけで直せるか、大掛かりな作り直しが必要かという視点

です。理解の深さを軽視すると、応募自体は増えても、入社後にミスマッチが起き、早期離職につながることがあります。

また、情報を整理するだけで直せる課題は、社内で対応できるため、先に取りかかれます。サイトの作り直しが必要な課題は、手間も時間もかかるため、あるべき姿を決めてから、どこまで直すかを判断します。

課題が見えたら、次はあるべき姿を描きます。目指すのは、

です。求職者が企業を知り、比較検討し、応募に至るまでの流れの中で、採用ホームページはどこを担うのか。伝えたいことが多いほど、採用ホームページの情報は増えていきます。

ですが、求職者が採用ホームページを見るのは、多くの場合、応募先を比較検討する段階です。そこで求められるのは、理解を深め、応募という行動に押し出すことです。 このあるべき姿を決めないまま情報を並べると、何のためのページか分からないまま終わります。

あるべき姿が決まったら、次はそれを誰に向けて示すのかを決めます。採用ホームページには、新卒の学生、転職を考えている社会人、内定を受けて入社を迷っている人、そして保護者と、さまざまな立場の人が訪れます。それぞれ、知りたいことも、見せるべきコンテンツも異なります。整理すると、次のようになります。

対象

知りたいこと

見せるべきコンテンツ

学生 この会社は将来性があるか、一緒に働く人はどんな人か 経営者メッセージ・事業ビジョン、社員インタビュー・座談会
転職希望者 具体的な仕事内容、求められる経験、入社後の処遇 経営者メッセージ、職種別の仕事紹介、社員インタビュー、キャリアパス・制度の説明
内定者 一緒に働く人、入社後の働き方、会社への納得の再確認 社員インタビュー、働く環境・制度
保護者 子どもが安心して働ける会社かどうか 社員インタビュー、企業理念、働く環境・制度

この違いを意識せず情報を並べると、誰にとっても中途半端なページになります。ただし、こうした違いを、すべて専用のコンテンツとして作り分ける必要はありません。

同じ社員インタビューでも、学生は先輩社員の働き方や本音を通じて、自分がこの会社でやっていけそうかを知りたいと考えます。転職希望者は、自分のこれまでの経験やスキルが、実際にこの会社で活かせそうかを見ています。内定者は、選考中に読んだはずの同じインタビューを、入社直前になって読み返し、この会社で働くという決断が正しかったかを、改めて確かめています。

また、若手求職者・学生に響くコンテンツや、採用サイトで具体的に取り組むべき10の改善施策(SNS・動画・働きやすさの数値化など)については、以下の記事で詳しく解説しています。

大切なのは、この違いを意識した上で、何を優先し、どう情報を並べるかを設計できているかどうかです。意識しないまま情報を並べて、内定者へのケアが不足すると、辞退という形でそれまでの努力が無駄になりかねません。

誰を優先するかによって、載せる情報の量も、見せる順番も変わってきます。ここが定まっていないと、次の情報設計で、また「あれも載せたい」に逆戻りします。最終的には、候補者には応募を、内定者には迷いなく入社してもらうことを、保護者には安心してもらうことを目指します。

求職者を知り、他社を知り、自社を知る。課題を整理し、誰に届けるかを決める。ここまでの意思決定が固まって、ようやく情報を設計し、デザインに落とし込む段階に入れます。

事業内容、実績、制度の説明といった項目を、思いつくままバラバラに並べるのではなく、「何を知ってもらうためのコンテンツか」という意味のまとまりで整理し直します。同じ量の情報でも、まとめ方を変えるだけで、伝わりやすさは大きく変わります。
意味のまとまりで情報を整理すると、読者にとって分かりやすくなるだけでなく、整理された情報は、AIが事業の特徴や強みを正確に読み取る助けになるためです。2026年3月時点の調査(ナイル株式会社、就活生419人)では、AIで調べた後に公式サイトや採用ページで事実確認をする学生は約9割にのぼり、意味のまとまりで整理された情報は、AIが事業の特徴や強みを正確に読み取る助けにもなります。

整理した情報を、デザインでどう見せるかも重要です。写真の選び方一つで、清潔感のある職場に見えることもあれば、雑然とした印象を与えることもあります。見出しの大きさや色使いで、情報の優先順位を視覚的に示すことも、デザインの役割です。情報を正しく組み立て、正しく見せる。この2つが揃って初めて、伝わる採用ホームページになります。

こうして整理した要件を制作会社へ正しく伝えるには、発注側としての明確な設計図(提案依頼書)を用意することが大切です。社内の意見を取りまとめ、曖昧な丸投げを防ぐための作成手順やポイントをまとめたガイド資料をご用意しましたので、ぜひあわせてお役立てください。

情報を増やすことは、簡単にできます。難しいのは、減らすこと、あるいは順番をつけることです。求職者を知り、他社を知り、自社を知る。課題を整理し、誰に届けるかを決めて、情報とデザインに落とし込む。この順番を守ることが、遠回りに見えて、実は一番の近道になります。

とはいえ、自社の強みや課題を、社内だけで客観的に整理するのは簡単ではありません。長く関わっているからこそ、何が特別で何が当たり前なのか、感覚が麻痺してしまうからです。

私たちは、求職者・他社・自社の整理から、情報設計・デザインまでを一貫して支援しています。何から手をつければいいか分からない場合は、一緒に整理するところからお手伝いします。採用ホームページの見直しを検討されている方は、ぜひご相談ください。