大手メーカーから中小の町工場まで、業種や雇用形態、規模もさまざまな企業の採用活動を支援してきた中で、「応募が来ない」「採用できない」と悩む企業の原稿には、共通したパターンがありました。
書き方のテクニックの話をする前に、まず一つ問いかけさせてください。
「あなたは自社の求人原稿を見て、自分なら応募したいと思えますか?」
この問いに自信を持って「はい」と答えられない原稿は、求職者にも同じように映っています。
募集要項だけでは、求職者は応募を判断できない
効果が出ない求人原稿に最も多いパターンが、募集要項だけで構成されているものです。
給与、勤務地、勤務時間、休日、福利厚生。確かにこれらは必要な情報です。求職者も当然確認します。しかし、これだけでは応募の判断ができません。
求職者が求人原稿を見るとき、何を考えているかを想像してみてください。「自分はこの会社に入って、どんな仕事をするのか」「どんな人たちと働くのか」「3年後、5年後にどうなっているのか」。つまり、入社後の自分をイメージしようとしています。
募集要項だけの原稿は、そのイメージを作る材料を何も与えていません。求職者の立場から見れば、「条件はわかったけど、どんな会社かわからない」という状態です。わからなければ、応募するリスクを取れません。結果として、応募を見送られます。
では何を書けばいいのか。クライアントからよく聞かれる質問です。そのときに私がお伝えしていたのは、「今、自社で活躍している社員を2〜3名イメージして書いてみてください」ということです。その社員はどんな経歴で入社したのか、どんな仕事をしているのか、どんな強みがあるのか。そこから書き始めると、自然と「入社後のリアル」が原稿に乗ってきます。
年収例も同じです。「年収300万円〜600万円」という書き方では、求職者はイメージできません。「22歳・未経験入社1年目で年収320万円」「30歳・入社3年目のリーダー職で年収450万円」のように、具体的な人物像と紐づけて書くことで、求職者は自分の将来をイメージできます。
ただし、この場合に注意が必要なことがあります。業務内容がレイヤーによって大きく変わる場合は、一つの求人にまとめず、求人自体を分けることを検討してください。未経験者向けと経験者向けでは、届けたいメッセージも、使う言葉も、まるで違います。
いいことだけ書いても、求職者にはもう通じない
「活気ある職場です」「がっつり稼げます」「アットホームな雰囲気です」「和気あいあいとした職場です」。
こうした表現を並べた原稿を、今でも数多く見かけます。採用担当者としては良かれと思って書いているのかもしれません。しかし現実として、求職者はすでにこれらの表現のコードを読み解いています。
- 「がっつり稼げる」 → きつい仕事
- 「和気あいあいとした職場」 → 人間関係が複雑
- 「アットホーム」 → 距離感が近すぎる環境
いいことだけを並べた原稿が信頼されないのは、そのためです。求職者は「本当のことを言っていない」と感じた瞬間に、その原稿から離れます。
そもそも、なぜこうした原稿になってしまうのか。現場でよく見てきたのは、採用担当者自身が現場の業務を十分に把握できていないケースです。現場を知らなければ、具体的なことが書けません。結果として、抽象的な美辞麗句を並べることになります。また、採用担当者が他の業務も兼任していて、原稿に十分な時間をかけられないケースも多くあります。
正直なメッセージが、ミスマッチの防止につながる
だからこそ、具体的に書くことが重要です。「アットホームな職場」と書くのではなく、「四半期に一度、懇親会があります」「週に一度、上司と1on1の時間があります」「業務後に飲みに行く文化があります」のように、具体的な事実を書く。読んだ求職者が「自分に合うかどうか」を自分で判断できる情報を渡すことが大切です。
重量物を扱う仕事であれば「重いものを持つ仕事です」ではなく「最大20kgの部品を扱う作業があります」と書く。具体的な数字や事実があれば、求職者は正確に判断できます。あいまいな表現は、求職者に誤った解釈をされるリスクを生みます。正直に具体的に書いた原稿は、合わない人を遠ざける一方で、合う人の共感を得ます。「こういう職場なら自分でも働けそうだ」と感じた求職者は、覚悟を持って応募してきます。それがミスマッチの防止につながり、採用の質を上げます。
その応募条件、全て持っている社員は今いますか?
「普通自動車免許必須、フォークリフト免許歓迎、ExcelやWordが使える方、コミュニケーション能力のある方、向上心のある方、ものづくりに興味のある方」。
こうした条件が延々と並んでいる原稿を見るたびに、私はクライアントにこう問いかけていました。
「この条件を全て持っている社員は、今いますか?」
多くの場合、答えは「いない」か「一部しかいない」です。自社の現役社員でも満たせない条件を、求職者に求めている。これでは応募のハードルが上がるばかりです。
整理の仕方はシンプルです。まず全ての条件をマスト要件とウォンツ要件に分けてください。
- マスト要件:「これがなければ採用できない」という絶対条件
- ウォンツ要件:「あれば望ましい」という加点条件
マスト要件が多すぎる場合は、さらにその中で優先順位をつけてください。「本当に入社初日からなければ困るものか」を基準に絞り込むと、多くの場合かなり少なくなります。ウォンツ要件も同様です。数が多すぎると求職者には「マストに見える」ため、同じく絞り込みが必要です。
この整理をするだけで、原稿のトーンは大きく変わります。「ハードルが高い会社」から「自分でも挑戦できるかもしれない会社」に変わります。

誰に届けるかが決まらないと、言葉も具体も変わらない
誰に届けるかが決まっていない原稿は、誰にも刺さりません。「幅広く応募を集めたい」という気持ちはわかります。しかし実際には、ターゲットを絞った原稿の方が、刺さる人には深く刺さります。
ターゲットが決まると、何が変わるのか。言葉が変わります。具体が変わります。
例えば「未経験歓迎」と書くのか、「前職で製造現場や物流の仕事をされていた方、歓迎します」と書くのかでは、届く相手がまるで違います。前者は誰にでも当てはまるようで、誰にも刺さらない。後者は読んだ瞬間に「これは自分のことだ」と感じる人が現れます。
「子育て中の方も多く在籍しています」「Uターン・Iターン歓迎」。これらもターゲットを意識した言葉の選び方です。誰に届けたいかが明確になれば、自然とこうした言葉が出てきます。
まず「どんな人に入社してほしいか」を具体的に言語化することから始めてください。前職、生活スタイル、価値観。できるだけ具体的にイメージする。そのイメージが固まって初めて、原稿に書く言葉と具体が決まります。

まずは自社の求人原稿を、求職者の目線で読み直してみる
「自分がこの原稿を見て、応募したいと思えるか。」
この視点を持てるかどうかが、求人原稿の質を決めます。募集要項の羅列になっていないか、いいことだけを並べていないか、条件を絞り込めているか、誰に届けるかが決まっているか。
一つひとつは地味な作業かもしれません。しかし10年以上この仕事に関わってきた経験から言えば、応募が来る原稿を書いている企業は、例外なくこの問いに向き合っています。
まず自社の求人原稿を、求職者の目線で読み直すことから始めてみてください。まずは無料相談から
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